更新日:2026年2月13日

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SBOMの基本と導入方法|ソフトウェアのセキュリティを守るための実践ガイド

この記事では、SBOMの基本知識や注目されている背景、導入方法などを詳しく解説します。

ソフトウェア開発において、セキュリティリスクへの対応は年々重要性を増しています。特に、OSS(オープンソースソフトウェア)の普及に伴い、脆弱性管理やライセンス対応の課題に直面している方も多いのではないでしょうか。

こうした中で注目を集めているのが、ソフトウェアの構成要素を可視化する「SBOM」です。本記事では、SBOMの基本知識や注目されている背景、導入方法などを詳しく解説します。セキュリティの強化や開発の効率化を目指す方は、ぜひ参考にしてください。

1. SBOMとは?基本知識と重要性

SBOMは「Software Bill of Materials」の略で、ソフトウェアに含まれるすべての構成要素(コンポーネント)を一覧化した「部品表」のことです。

SBOMには、使用されているOSS、サードパーティ製ライブラリ、独自開発のコンポーネントなど、ソフトウェアを構成するすべての要素を記載します。各コンポーネントのバージョン情報、ライセンス情報、依存関係なども含まれており、これらの情報を一元管理し、製品全体の透明性や安全性を確保する重要な役割を果たします。

なお、NTIA(国家電気通信情報局)は、SBOMに記載すべき「最小限の要素」についてガイドラインで言及しています。具体的には以下の3つの要素になります。

要素定義記載すべき項目例・要件
データフィールド(Data Fields)ソフトウェアにおける各コンポーネントの基本的な情報・コンポーネント名 ・サプライヤー名 ・バージョン情報 ・ライセンス情報 ・SBOMデータの作成者 など
自動化サポート(Automation Support)SBOMを自動的に処理するために求められる要件SPDXやCycloneDXなどの標準データフォーマットの採用
プラクティスとプロセス(Practices and Processes)SBOMを適切に運用するためのルールや体制・SBOMの配布・配信方法 ・アクセス管理 ・SBOMの作成頻度・深さ など

2. SBOMが注目されている背景

SBOMとは3

近年、ソフトウェア開発の環境が大きく変化する中で、SBOMの重要性が急速に高まっています。ここでは、SBOMの注目度が高まっている3つの背景について、詳しく見ていきましょう。

2-1. ソフトウェアサプライチェーン攻撃の増加

ソフトウェアサプライチェーン攻撃とは、開発・供給過程で使用されるソフトウェアやツールに不正なコードや脆弱性を仕込む手法です。この攻撃は、正規の更新プログラムやコンポーネントを介して攻撃が拡散するという特徴があります。信頼される配布チャネルを利用するため攻撃の検知が極めて困難であり、被害が広範囲に及ぶケースも少なくありません。

独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2024組織」(外部サイト)では、サプライチェーンを狙った攻撃が2位にランクインしており、その深刻さが伺えるでしょう。また、同ランキングの5位「修正プログラムの公開前を狙う攻撃(ゼロデイ攻撃)」や7位「脆弱性対策情報の公開に伴う悪用増加」では、脆弱性が指摘されたコンポーネントの存在や依存関係を迅速に把握できなければ、被害拡大の要因になります。

このような背景から、ソフトウェアの構成要素を詳細に可視化し、脆弱性や不正コードの混入を早期に検知できるSBOMの重要性が高まっています。

2-2. OSSの普及

OSSは、現代のソフトウェア開発において不可欠な要素のひとつです。OSSの活用は、開発コストの削減や開発スピードの向上、品質の確保など、多くのメリットをもたらします。

一方で、OSSの利用拡大に関しては、一部課題もあります。特に深刻なのが、OSSコンポーネントを標的としたサプライチェーン攻撃の増加です。また、使用しているOSSの脆弱性対応やライセンスコンプライアンスの確保も、重要な課題となっています。

このような課題を解決するためにも、OSSを含めコンポーネントのバージョンやライセンス情報まで管理できるSBOMの有効性が注目されるようになりました。

2-3. 各国の法規制と経済産業省による推進

世界ではSBOMの導入が加速しています。米国では2020年に発生したSolarWinds事件の影響を受け、2021年に「国家のサイバーセキュリティ向上に関する大統領令を発令しました。これにより、連邦政府機関に製品を提供するソフトウェア開発者や供給者は、正確なSBOMを提供することが求められるようになりました。

また、EUでも2024年にEUサイバーレジリエンス法(CRA)が施行され、EU市場にデジタル製品を販売する際にSBOM対応が求められます。

国内においては、2024年8月に経済産業省による「ソフトウェア管理に向けたSBOM(Software Bill of Materials)の導入に関する手引ver2.0」が公開されるなど、SBOM導入を支援する取り組みが行われています。

このように国内外でSBOMに関する法規制やガイドラインが強化されているため、今後さらに普及が進んでいくと考えられます。

3.  SBOMとクラウドネイティブ・オープンソース活用環境の関係

SBOMとクラウドネイティブ・オープンソース活用環境の関係

近年はクラウド環境での実行を前提としてソフトウェアの開発・運用を行う「クラウドネイティブ」と呼ばれる手法に注目が集まっています。

クラウドネイティブな開発環境では、マイクロサービスやコンテナ、OSSといったモダンな技術の活用によって効率的な開発と運用を実現できます。しかし、これらの技術を活用することでソフトウェアを構成する要素はより細分化され、全体の管理や監視が難しくなるという課題が発生してしまいます。

そこでSBOMを導入すれば、複雑なソフトウェアの細かな構成要素を可視化できるため、クラウドネイティブのメリットを享受しつつ、セキュリティやコンプライアンスにも対応することが可能です。

ただし、後にも触れますがソフトウェア全体の透明性をきちんと確保するためには、SBOMを現実的な観点で運用することが求められます。

4. SBOMを導入すべき理由とその効果

SBOMを導入すべき理由とその効果

SBOMの導入によって、セキュリティリスクの可視化や脆弱性管理の効率化など、多くのメリットがあります。ここでは、SBOMを導入すべき理由とその効果について詳しく解説します。

4-1. ソフトウェアサプライチェーンリスクの可視化

SBOMを導入する最大のメリットのひとつは、ソフトウェアサプライチェーンのリスクを可視化できる点です。開発・運用するソフトウェアの全構成要素が一覧化され、各コンポーネントのバージョンや依存関係を明確に把握できるため、効率的かつ効果的なセキュリティ対策が可能となります。

特に、複数のベンダーが関与する大規模なシステム開発において、すべてのコンポーネントが同じセキュリティ基準を満たしているかを確認するのは容易ではありません。一方、SBOMがあれば、各ベンダーが提供するソフトウェア部品のセキュリティ状況を統一的に管理でき、潜在的な不備やリスクを早期に発見できます。

このように、SBOMは組織のセキュリティリスク管理を強化し、セキュリティ事故を未然に防ぐための重要な基盤となります。

4-2. 脆弱性管理の効率化と迅速な対応

SBOMを活用すると、システム全体の脆弱性管理を大幅に効率化できます。特に、新たな脆弱性が報告された際の迅速な対応が可能になるのは大きなメリットです。SBOMがあれば、脆弱性が指摘されたコンポーネントや、セキュリティリスクの高い古いバージョンのソフトウェアを即座に特定し、対処することができます。

さらに、各コンポーネント間の依存関係も詳細に記録されているため、特定の脆弱性が他の部品に与える影響範囲の正確な把握が可能です。これにより、問題解決に向けた対応を効率的に進められ、被害を最小限に抑えられます。

このような迅速で正確な対応力は、セキュリティ事故への対処だけでなく、顧客や取引先からの信頼を維持するためにも欠かせません。

4-3. コンプライアンス対応とライセンス管理

SBOMは、ソフトウェア開発におけるコンプライアンス対応とライセンス管理の効率化を支援する強力なツールです。特にOSSを利用する場合、それぞれのコンポーネントには固有のライセンス条件が設定されており、これらを適切に管理しなければなりません。

SBOMを活用すると使用しているOSSのライセンス情報を正確かつ迅速に確認できるため、ライセンス違反のリスクを回避できます。これにより、法的トラブルやブランドイメージの毀損といった事態も防げるでしょう。

また、ライセンス管理を手動で行う場合、見落としや記録ミスが発生しやすく、チェックに多くの時間を要するケースがあります。SBOMを活用するとライセンス情報の管理を自動化でき、運用効率が大幅に向上するのもメリットのひとつです。

4-4. コスト削減や開発の効率化

SBOMの導入は、組織全体のコスト削減や開発の効率化にも寄与します。まず、脆弱性の特定やライセンス違反の確認にかかる手間を大幅に削減できるため、人的リソースの効率的な活用が可能になります。

また、セキュリティリスクの早期発見と対応が可能になることで、インシデントへの対処や顧客補償にかかるコストを抑えられる点も大きなメリットです。加えて、ライセンス違反による法的対応コストや、プロジェクトの遅延によるペナルティコストなども抑えられます。

さらに、ソフトウェアの全体構成が明確になるため、新しい機能追加やメンテナンス作業も効率的に行えます。そのため、SBOMの活用は、結果として開発チームの生産性の向上にもつながるでしょう。

5. SBOMの主要なフォーマット

SBOMの主要なフォーマット

SBOMの主要なフォーマットには以下のようなものがあり、ここではそれぞれの特徴について解説します。

  • SPDX
  • CycloneDX
  • SWIDタグ

5-1. SPDX(Software Package Data Exchange)

SPDXは、Linux Foundationが主導するプロジェクトで開発された標準フォーマットです。主にOSSにおけるライセンス情報の把握に活用でき、ISO/IEC 5962:2021として国際標準規格に認定されているのが特徴です。

SPDXの中から必要最低限の項目を絞り込んだ「SPDX Lite」もあり、小規模プロジェクトや簡易的な形で迅速に情報共有をしたいケースに向いています。

5-2. CycloneDX

CycloneDXは、OWASPのプロジェクトによって開発されたセキュリティ重視のフォーマットです。各コンポーネント間の依存関係や脆弱性情報を細かに管理できるのが特徴で、ソフトウェアのセキュリティを高めるために重要な要素を記載することが可能です。

そのため、CycloneDXはDevSecOpsを実行する環境や、継続的な脆弱性の評価が求められるなどセキュリティ要件が厳しいプロジェクトでの活用が向いています。

5-3. SWIDタグ(Software Identificationタグ)

SWIDタグは、ISO/IEC 19770-2で標準化されているフォーマットでソフトウェア資産管理を目的として活用されます。具体的には、インストールされた対象のソフトウェアにSWIDタグが付与され、個々の製品を識別できる仕組みとなっています。

また、SWIDタグのタイプによってはパッチ(修正プログラム)を識別するための情報も含まれています。

6. SBOMの導入ステップ

SBOMの導入ステップ

SBOMを導入するには、社内体制の整備やツールの選定などいくつかのステップを踏む必要があります。

  1. 社内体制の構築・ツールの選定
  2. SBOMの作成と共有
  3. SBOMの運用と管理 

6-1. 社内体制の構築・ツールの選定

SBOMを効果的に導入・運用するためには、まず社内体制を整える必要があります。SBOM活用を推進する責任者を配置し、組織体制を整備しましょう。また、実際にSBOMを管理・運用できる専門的な知識やスキルを持つ人材を確保しておくことも大切です。

SBOMツールの選定においては、自社の目的や規模に応じたものを選ぶことが重要です。選定に迷う場合は、経済産業省の手引を活用するとよいでしょう。

経済産業省の手引には、機能や性能、対応フォーマットなど選定観点の例が示されているため、これらを参考にしながら最適なSBOMツールを選びましょう。

参考:ソフトウェア管理に向けたSBOM(Software Bill of Materials)の導入に関する手引 ~全体概要~(経済産業省)

6-2. SBOMの作成と共有

選定したSBOMツールを導入したら、対象ソフトウェアのスキャンを行い、コンポーネントを解析します。この段階で、誤検出や検出漏れがないかを慎重に確認しておかなければなりません。

そして、解析したコンポーネントのデータをもとに、SBOMを作成します。SBOMのフォーマットや項目、出力ファイル形式などについてあらかじめ基準を決めておくと、効率的にSBOMの作成を進められます。また、SBOMを対象ソフトウェアの利用者やサプライヤーに共有する際は、その方法についても事前に検討しておきましょう。

たとえば、クラウドストレージやWebサイト、製品への組み込みなど、SBOMの共有方法にはいくつかの選択肢があります。公開範囲やデータ改ざん防止策、サプライヤーからの要件なども踏まえて、適切な方法を採用してください。

6-3. SBOMの運用と管理 

SBOMは作成して終わりではなく、継続的な運用と管理が求められます。定期的に脆弱性スキャンを実施し、セキュリティ事故やコンプライアンス違反のリスクがないか確認しましょう。脆弱性情報が自動更新・通知されるツールを活用すれば、効率的かつ正確な運用が可能です。さらに、ソフトウェアのアップデートや新規コンポーネントの追加があった際にはSBOMも適宜更新し、常に最新の状態を保つ必要があります。

7. SBOM導入時の課題

SBOM導入時の課題

SBOM導入時には以下のような課題に直面するケースも少なくないため、事前に把握し必要に応じて対策を検討しておくことが大切です。

  • ツール選びが難航する可能性がある
  • ツール間での出力フォーマットの互換性を確認する必要がある
  • SBOMの運用には十分なリソースが必要になる
  • サプライチェーン全体の透明性確保の難しさ

7-1. ツール選びが難航する可能性がある

SBOMツールは有償版と無償版を含め多くの選択肢があり、それぞれの特徴を理解したうえで適切なツールを選定しなければなりません。

有償ツールは機能が豊富でサポートが充実していますが、導入コストが高くなる傾向があります。一方、無償ツールはコスト負担が少ないものの、機能やサポート範囲が限定的な場合が多く、使い方によっては十分な効果が得られない可能性があります。さらに、海外製のSBOMツールは問い合わせやサポートが英語のみの場合もあり、言語の壁が障害となるケースも考えられます。

このように、SBOMツールを選定する際には、ツールの特性だけでなく、自社のニーズやリソースに適合しているかを慎重に評価することが重要です。

7-2. ツール間での出力フォーマットの互換性を確認する必要がある

先ほども紹介したように、SBOMにはSPDXやCycloneDXなどのフォーマットが存在しますが、SBOMツールによって出力されるフォーマットが異なります。つまり、ツール間での出力フォーマットの互換性が確保されていない場合、取引先・顧客への情報共有や、データ連携が困難になる可能性があります。例えば、自社がCycloneDXを採用していても、取引先が対応していなければフォーマットの変更が必要になります。

こういった事態を防ぐためにも、自社を取り巻く環境で主流となっているフォーマットを確認してからツールを選定する、または複数フォーマットに対応しているツールを導入するなどの対応が求められます。

7-3. SBOMの運用には十分なリソースが必要になる

SBOMを効果的に運用するには、まずツールを使いこなすための専門知識とスキルを持つ人材が必要不可欠です。特に、SBOMの作成や更新、脆弱性情報のモニタリング、影響範囲の分析といった業務を適切に行うには、高度なスキルと経験が求められます。また、有償ツールを導入する場合には、ライセンス料や月額費用といった運用コストが発生するため、予算の確保も課題のひとつです。

さらに、SBOM運用の効果を十分に発揮するためには、運用プロセスの標準化や体制の整備も必要です。運用体制が不十分だとSBOMの管理が滞り、結果としてセキュリティリスクの増大やコンプライアンス違反などを招く可能性が高まります。

このように、SBOMの効果を最大限に引き出すには十分なリソースを確保する必要があり、これらが不足すると適切に運用できないおそれがあるため、注意が必要です。

7-4. サプライチェーン全体の透明性確保の難しさ

SBOM対象となるソフトウェアが多くの依存関係を持つなどサプライチェーンの規模が大きく、かつ複雑化している場合、全体の構成要素を正確に管理するのは現実的な難しさがあります。事実、SBOMは自社内だけで完結する取り組みではなく、利害関係者との間で発生する情報共有の中で、要求事項の不一致やフォーマットの差異などの課題が発生する可能性もあります。さらに、導入・運用事例の少なさ、社内でのノウハウ不足、運用負荷の課題も透明性確保における大きな壁になります。

正確かつ確実にSBOM導入を進めるためには、最初から完全な網羅を目指すのではなく、徐々に可視化の範囲・レベルを高めていき、必要に応じて運用ルールや体制の改善を試みる姿勢が大切だと言えます。

まとめ:SBOMを活用したセキュリティ対策が求められる

SBOMは、ソフトウェアの構成要素を可視化し、脆弱性やライセンスの管理を効率的に行うための重要なツールです。特に、近年増加しているソフトウェアサプライチェーン攻撃やOSSの普及に伴うセキュリティリスクへの対策として、SBOMの注目度が高まっています。

さらに、DevOpsにセキュリティを融合させた「DevSecOps」の実践においても、SBOMは重要な役割を果たします。セキュリティを確保しながら迅速に開発を進めたい場合にも、SBOMツールの活用を検討してみてください。

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監修:ハシュカ アンドリュー / Andrew Haschka @ahaschka (GitLab フィールド最高技術責任者)

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